Secret 1 壊れゆく夢

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「皆本さん、あ、あの……よかったら、売り場……案内しましょうか?」 「へ?」 「……初めまして、同じデザイン部の北野結衣です」  北野結衣――。  紅美と同じデザイン部所属の社員で、二年前に本店に配属された社員だ。眼鏡をかけて、フレームにかかった長めな前髪は、人とあまり顔を会わせたくないオーラを感じさせた。  カラーもパーマもしていないナチュラルな黒髪は、手入れをすれば艶も出そうだったが、そんなことはお構いなしに無造作にゴムで束ねていた。 「ありがとうございます。そう言っていただけると助かります」 「あ、い……いえ、私なんかでよければ」  モジモジと身体を揺らしながら俯いたままの結衣は、紅美の笑顔に少し照れ笑いを浮かべた。
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