第1章

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「もうすぐ3年生だね、日羽。」 放課後。 小銭を忘れたの、という夏生に100円を貸す。 夏生はそれで自販機でイチゴミルクを買った。 私はコーヒー牛乳。 それを持って、二人で屋上へ。 「来年も同じクラスになれるといいね。日羽がいないと、私困っちゃう。」 忘れ物、私がたくさん貸してるものね。 便利だから困るの? それでもいい。 夏生と一緒にいられるなら。 「あのね、日羽。気づかない?」 ストローから唇を離し、夏生が私の顔をのぞき込む。 「私、以前はそんなに忘れ物してなかったよ?」 そうだっただろうか。 貸すことが嬉しくて、ほんの少しだけ触れられることが嬉しくて。 忘れ物をしてくれなかったときのことなんて、覚えてない。 .
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