第1章

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 さて、役者が揃ったので話を始めようかと思う。  いつ頃かは知らない。色々調べて【あんころ餅事件】と ほぼ同時期と思われるので1?2年前が妥当だろう。  ユウちゃんは内気な性格なのか、それとも猫のように 自由気儘な悠々自適ライフ主義だったのか。よく知らない。 友人が居なかったわけでもないが、ユウちゃんには、 秘密があったのだそうだ。 「家では飼えない仔猫」が公園に一匹いたらしい。 この時期の情報について、近隣の犬猫で知るものは無かった。 恐らく、完全な野良だと思われるが、この仔猫は 当時から、薄いベージュで覆われたアルパカみたいな フカフカの毛並みに、やたらと長いヒゲだったそうである。  それほど長いヒゲなら、俺が察しないのは少し奇妙だったが とにかく、ユウちゃんは猫を飼いたかったらしい。  だが家では何か事情があって、猫は飼わないと決めていた。 ユウちゃんが生まれる前には、一匹居たらしくお爺さんに 先立たれた、お婆さんにとても可愛がられていたらしい。 その猫も、ユウちゃんが生まれて間もなく逝ったようだ。  となれば俺がまだ生まれる前なので、知らないのも道理。 だが、ユウちゃんが公園で密かに会っていたのは、別の猫で、 これがお婆ちゃんが、話していたベージュの毛並みそっくり。 故に印象が強かったらしい。  エサをあげたら、着いて来るかもしれない。そう思った ユウちゃんは、我慢して餌付けだけはしなかったらしい。 他にも公園には猫がいたようだが、このベージュの猫だけは エサも無くても、ユウちゃんに甘えたかった様子だ。  ある日の事だ。ベージュの猫というは懐いてしまい、 ユウちゃんの家に付いて来てしまったらしい。 家では猫は飼えない決まりなのだが、ユウちゃんは困って 庭でウロウロしていたと当時を述懐して言う。  そんな時にお婆ちゃんが出てきて、挨拶をしたらしい。 「可愛い子だねえ。奇麗なクリームの毛並みだねえ」 そのお婆ちゃんの反応に、ユウちゃんは食いついた。 「【クリーム】って言うの!うちで飼おう!お婆ちゃん! 野良猫で公園に住んでるの。ご飯あげようよ!」  でも、お婆ちゃんは優しくユウちゃんに言いました。 「でもねえ。野良さんは自由気儘でいたいんだよ。 家で今から飼っても、すぐにどこかへ行ってしまう。 そういうのが野良さんたちの、ルールなんだよ。」と。
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