第1章

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 お婆ちゃんのいう事は俺達、猫には当然の事だ。 野良には野良、飼いに飼いの約束事ってのがある。 まぁ、俺の場合は少し特殊なんだが、置いておく。で  お婆ちゃんの言う事を聞いて、また明日ねと。 ユウちゃんは公園でという意味だったのだろうが。 おやすみの挨拶をした。エサは最後まであげなかった。  翌日に事態は急転する。朝、日曜日なので遅く起きた ユウちゃんを、庭でずっと【クリーム】は待っていた。 見るに見かねて、早起きのお婆ちゃんが先にエサを、 ついあげてしまった。物凄い勢いで爆食したらしい。 その元気さに、お婆ちゃんも驚いたと証言している。  必然、ユウちゃんは家で飼ってもいいと思ったらしい。 しかしお婆ちゃんの答えは、少し違った。  家で飼うのに反対なのではなく、野良さんの自由を 奪ってしまう事に反対だという。  ユウちゃんは気を落とした。それを慮ってお婆ちゃんは 「でもねえ。もしもユウちゃんがいる、この家が好きなら また来てくれる。飼うのではなく【クリーム】が自分で 決めるのがいいと思うのだけれどねえ。」  そう言った。お父さん、お母さんも反対では無かった。  こうなってくると、ユウちゃんにとって学校はかなり 長い時間となってしまった。飼っているわけじゃない。 だから、居なくなっても【クリーム】の自由である。 家の庭で会えるのか、公園で会えるのか、それさえも ユウちゃんには判らないから、余計に気になるのだ。    下校時刻と同時に、ユウちゃんは学校を飛び出して まっすぐに家に帰った。玄関をあけるなりにランドセルを 放り出して「お母さん!【クリーム】は?!」と叫ぶ。  【クリーム】はお婆ちゃんから貰った、座布団で縁側に 日向ぼっこして寝ていた。ユウちゃんが近づくと、 すぐに目を覚まして、舐めてきたらしい。ユウちゃんは 【クリーム】が家を選んでくれたと、思っていたようだ。  学校から帰ればいつでも、縁側に【クリーム】がいる。 それが次第に当たり前になりつつあった。  そんなある日。  急に【クリーム】は遊びにこなくなった。ユウちゃんは お婆ちゃんにどうしたのかなと訊いた。それに答えて 「野良さんは自由だからねぇ。別な居場所を見つけたのなら それは良い事なのだから、しょうがないの。」 こんな風に言っていた。お婆ちゃんの方がユウちゃんよりも ガッカリしているように見えたらしい。
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