第1章

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 公園だけでなく、辺りにもあちこち探していたらしい。 俺のヒゲ探偵事務所は、すれ違いで開業前だったので、 この話まで聞いてなかった。当時は色んな奴の面倒を、 見なくちゃなんないんで、大変だったしな。(主にヒゲ)  ところが、数ヶ月してから何もなかったように。 【クリーム】は帰ってきたんだが、何もなかった所じゃない。  仔猫を咥えてきた。野良には当然だが親子は似ていない。 というのは普通なのだが、どうみても【クリーム】の仔猫だ。  ちなみに猫も犬同様に、数匹生まれるが野良雑種となれば 全部、色柄も違うという事もある。そういうもんだ。 人間だって双子以外は、そんなに似てないもんだろう?  それはともかく。  【クリーム】が一匹だけを連れ帰った事実はあった。 毛並みはフカフカというより、スッキリだった。 仔猫が食べ終わるまで、様子をみているし、お婆ちゃんは 【クリーム】の仔猫に名前が必要だから、ユウちゃんお願いね。 と言った。薄くて青い色だけど、よく見たら斑になってる。 それは、水玉模様のような。「ミズタマ!」  帰宅したお父さんが、自由に過ごせるようにと 【クリーム】と【ミズタマ】にお家を庭に作ってくれた。 お婆ちゃんはミズタマ用の座布団をくれたり、タオルもくれた。  ただ、お母さんだけが気にしていた事があった。 家の中を冒険し始める程、好奇心旺盛な【ミズタマ】と違って、 【クリーム】が最近、ご飯を食べないと言って、 色々、調べてくれたらしい。食べられそうなモノを変えても 【クリーム】は食べなくなっていたらしい。  そして【クリーム】は再び居なくなった。 証言によると、ユウちゃんは酷く泣いて【クリーム】を 責めたらしい。お母さんなのに酷いと。泣いたらしい。 【ミズタマ】を置いて居なくなった事もショックだった様だ。  お婆ちゃんによれば。 「野良猫さんは大変だから住む場所を、時々変えないと危ない。 でも、仔猫はユウちゃんの家なら、大丈夫だと思ったんだよ。 だから【ミズタマ】には、お留守番をお願いしたんだと思うよ。」  ♂猫としてで恐縮だが、そうかもしれぬ。この祖父殿の 言葉は我々猫たちも、意識しておいても損はないと俺は思う。 同時に、少々ヒゲに慣れすぎた自分に、呆れたりしたが。  それはともかく、ユウちゃんには仔猫を置いたまま出て行った。
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