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「…美沙?俺だけど…入っていい?」
「?いいけど…」
部屋に入ってきた優太。どこか真剣な顔つきでさっきまでの、のほほんとした感じはどこへやら。
「どうかした?」
「……別に。ただ、あんまりテストの点数下げんなよってだけ。母さん怒らせると怖いから」
「う…わ、分かってるよ」
さっきの真剣な顔つきは一体…
な、なんかどっと疲れた…
「じゃあ私、下に行くから…」
「……まだ…桔平兄の事、好きなの?」
「…うん……好き、だよ」
今でも私は桔平お兄ちゃんのことが好き…めんどくさいやつと思われてもいい。ただ…もう一度だけ、会いたい。
「…そっ。ま、頑張って」
優太は自分の部屋へと戻っていった。
「それで、話したいことって?」
「美沙、私ね…」
「?」
「あなたに家庭教師、つけちゃった♪」
「え…えっ!? 」
家庭教師…!?
「な、なんでいきなり…」
「だって数学の点数ガタガタよ。この前も赤点だったじゃない。だからこれを機に、家庭教師でもつけようかなって思って♪」
「だからって…いきなりすぎるよ。もっと早く言ってくれれば…それに…あの、費用も…」
「費用?彼は無料でいいって言ったわよ?それに、費用が気になるなら勉強していい点とってちょうだい♪」
「は、はい…。…ていうか、彼?」
「そ。男の人。美沙ちゃんもよく知ってる人よ♪」
あっ、いっけない。と笑う母に、美沙は一つの可能性が頭の中に浮かぶ。もしかしたら桔平なんじゃないかと。でも、自分で「ここにはいない」という結論を決めつけてしまっていた。
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