☆第1章☆

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「…美沙?俺だけど…入っていい?」 「?いいけど…」 部屋に入ってきた優太。どこか真剣な顔つきでさっきまでの、のほほんとした感じはどこへやら。 「どうかした?」 「……別に。ただ、あんまりテストの点数下げんなよってだけ。母さん怒らせると怖いから」 「う…わ、分かってるよ」 さっきの真剣な顔つきは一体… な、なんかどっと疲れた… 「じゃあ私、下に行くから…」 「……まだ…桔平兄の事、好きなの?」 「…うん……好き、だよ」 今でも私は桔平お兄ちゃんのことが好き…めんどくさいやつと思われてもいい。ただ…もう一度だけ、会いたい。 「…そっ。ま、頑張って」 優太は自分の部屋へと戻っていった。 「それで、話したいことって?」 「美沙、私ね…」 「?」 「あなたに家庭教師、つけちゃった♪」 「え…えっ!? 」 家庭教師…!? 「な、なんでいきなり…」 「だって数学の点数ガタガタよ。この前も赤点だったじゃない。だからこれを機に、家庭教師でもつけようかなって思って♪」 「だからって…いきなりすぎるよ。もっと早く言ってくれれば…それに…あの、費用も…」 「費用?彼は無料でいいって言ったわよ?それに、費用が気になるなら勉強していい点とってちょうだい♪」 「は、はい…。…ていうか、彼?」 「そ。男の人。美沙ちゃんもよく知ってる人よ♪」 あっ、いっけない。と笑う母に、美沙は一つの可能性が頭の中に浮かぶ。もしかしたら桔平なんじゃないかと。でも、自分で「ここにはいない」という結論を決めつけてしまっていた。
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