第5章「屋上の君の過去」

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そのまま言葉を交わさず、土曜日になった。 俺の通う高校では文化祭2日目が始まり、10時から一般のお客さんがゾロゾロと入ってきていてとても賑やかになっていた。 俺のクラスは校庭の出店で焼きそばを売っている。 そして丁度、俺が店番をしている時――。 「お兄ちゃん!」 美愛が手を大きく振りながらやって来た。 昨日あんなに怒っていたのが嘘だったかのように、美愛は満面の笑みを浮かべている。 「美愛、来たんだ」 「だってお兄ちゃん、たくさん奢ってくれるって言ってたから!」 「分かったよ。もうちょっとで交代だからその辺で待ってて」 「はーい」 出店の後ろにあった縁石に腰を下ろし、交代する人が来るまで、美愛は楽しそうにパンフレットを見ていた。
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