第1章

12/22
前へ
/22ページ
次へ
夏休みに入って3日目。 就寝22時、起床13時の私がまだぐっすりと眠っている時のこと。 「「まじでぇぇええ?!?!」」 下手したら駅まで届いていたんじゃないかというくらい大きな声が家いっぱいに響いた。 『何よなによ~。朝っぱらからうるさいし、愛ちゃん起きないし...』 深い眠りについている私にはそんな音、屁でもないのだ。 『愛ちゃ~~ん、起きてよ~』 困っているハツちゃんなんて知らない私はまだぐっすりと寝ている。 結局起きたのはその事件が起きてから4時間後のことだった。 起きて真っ先に目に飛びこんて来たのは部屋の隅で体操座りをしているハツちゃん。 いったい何があったんだろう、と不思議に思った。 その後詳しくハツちゃんにわけを聞き、ようやく理解した私は今リビングで気分の良すぎる母と姉を見て気持ち悪い感覚に襲われている。 「朝、大声だして何かあったの?」 変な雰囲気に耐えかねた私は思い切って口を開いた。 母と姉はお互いの顔を合わせ、にまっと笑い 「「小坂家とのキャンプが決まったの!」」 と、大きな声で言った。 小坂家って... 「実君の?」 たった1つの心当たりを口に出す。 「そうそう!そうなの!芸能活動休止は仕事に疲れたからでこういう時にこそリフレッシュするのがいいだろうってお出かけの話だけ続行になったのよ~。」 実君と一度も会ったことのない、そして過剰なファンがいる家族と行っても実君のストレスになるんじゃないかと考えたが私もやはり私だ。 実君に会いたい気持ちの方が勝ってしまう。 それだけではなく、夏休み中の母と姉の機嫌にも関わってくる。 「よかった...」 いろいろな意味を込めて言うとハツちゃんが昨日のにやけ顏よりももっと酷い顔で 『ほんとによかった!うんうん!よかった!愛ちゃ~~ん!!』 と近づいてきたのでいそいで自室へ逃げた。 最近ここに逃げるのが多いな。 よかった部屋があって。 神様仏様ありがとうございます。 私はこの世界に生まれて幸せです。 感謝の気持ちを空におくり私はそのまま眠りについた。 『愛ちゃ~~ん。何で無視するの~...ってまた寝てるし!』 起きた私が見た光景はもちろん部屋の隅で体操座りをしているハツちゃんだった。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加