第1章

5/22
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
『そんなことはいいから早くゲームしよ~よ~。つまんなーい、つまんなーい!』 さっきまでバラエティ番組を見て笑っていたのに突然気を悪くしたのかハツちゃんが駄々をこね始めた。 「さては、大好きな小坂実(こさか みのる)君の出番が終わったからだろう!そんなに駄々こねて!」 『当たり前じゃない。』 小坂実とは最近テレビで引っ張りだこの人気イケメン俳優である。 ドラマやバラエティなど様々なジャンルで活躍しておりテレビで見ない日はない、と言われる程著名な方なのだ。 もちろん、その分ファンも多いわけで隣にいるコイツもおアツ中。もっといえば私もファンだし母も姉もファンに属する。 小坂実効果は家だけではとどまらず私の通っている学校また地域にまで広がっていた。 それは朝の挨拶から 「おはよう愛ちゃん。昨日の”僕らの日記”見た?もう!小坂君がすごくかっこよかったのよ!」 近所のおばさんの第一声 「昨日の僕日の実君ヤバくなかった?」 「わかる!あそこのキスシーンは死ぬかと思った。」 通学中の電車で話している他校の女子高生 「僕日ヤバい。実君ヤバい。」 「え、待って。まだ見てないから言わないで!今日見るの!」 クラスメイトの会話 「あ、愛ちゃんおかえり。今ね昨日の僕日見てるんだけど...あぁ!ここ!このキスシーン!うっ...実君っ...」 帰宅まで約1日中に及ぶ。 僕日とは小坂君が主演をつとめている月9ドラマ”僕らの日記”の略称で幅広い年代に人気なドラマである。 「お姉ちゃん。それ終わったらテーブルにある煎餅のゴミくず捨ててよね。」 録画してあるドラマに夢中なお姉ちゃんからの返事はなく返事される期待もないので自室へ向かった。 自室にこもってすることと言えばただ1つ。 季節は梅雨明けの7月。 あと少しで夏休みになる。 実は小坂実君。 私のお父さんの幼馴染の子供なのである。 お母さんはそんなお父さんをいいように使い夏休みに家族ぐるみでどこかへ出かけようというプランをたてた。 その為の準備をしなければならない。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!