ORanGe

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わたしの鼻腔に摺りついたあなたの薫りが、染み付いて離れないの。嗅ぐ度にあなたとの夜を思い出してわたしは少しだけ泣きたくなるの。溺れたわたしに浮き輪はなくて、伸ばした手は夜のかおりを知らなくて、嗅いでいるのは朝の香りで。それは仄かな蜜柑の香りで彼の手では橙の果実しか拾えないの。
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