ORanGe

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果樹は葉を散らしても掃き棄てられるだけで どんなに足掻こうとその身を実にはできないの。 細くて綺麗な貴殿の指先は、汁のつまった甘いそれだけを摘む。 健気に汁を垂らしたところで苦いんじゃあ貴殿は振り向きもしない。 だから実になんてならないの。 だから葉であり続ける。それはどんなに辛いとしてもわたしはわたしであるのだから 果実は軈て食べられてしまうけれどわたしは堕ちなければ貴殿に棄てられることはないでしょう?
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