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くねくねとした山道を超え。
お昼前に古仁屋の町に着いた。
今日は晴天。
暑い。外の日差しは暑かった。まだ4月だというのに。
だけどそのかいもあってか、広がる海はとても綺麗だった。
私たちの車は古仁屋港に着いた。
着いてしまった。
車を降りてフェリーの時間を確認すると次の出向は14時。
まだ2時間程の時間があった。
さぁどうやって私はここから抜け出そうか。。
「ねぇあれなぁに?」
拓也の指さす先には人だかりができていた。
青いハッピ姿の人たちを囲むように人だかりができている。
ワーワーとまるでお祭り。
近づいてみると中心には黒くて大きな塊。牛がいた。
「おお!闘牛かぁ。初めて見た」
父、拓郎もはしゃぐ。
闘牛。牛の背には鬼丸と書かれたタスキが下げられていた。
「ちょっと聞いてみたけど、昨年の闘牛のチャンピオンらしいわよ。」
へぇーー。
確かに強そう。隆々に鍛えられた筋肉が際立つ。角も目つきも鋭い。
どんなお肉の味なんだろう。おいしそう。
「オラァ!!馬鹿どもが!!それ以上近づくんじゃねぇ。」
鬼丸の綱を握る若い、たちの悪そうな、いかにもチンピラ風の金髪の兄ちゃんがたちの悪い言葉を私たちに向ける。
「ぶっ殺されてぇか!!!」
闘牛を囲んでいた人達が一歩二歩と後ずさる。
「わかりゃあいいんだよ」
後ずさる私たちを余所に闘牛に近づく人たちがいた。
!!!
全身白い服に身を包んだお婆ちゃんの集団。
腰には大きな葉っぱを携えている。
「シュンイチ。何ねその言葉遣いは。」
その中の一人の老婆が前に出てヤンキーを叱る。
「おう。オババまだ生きてたか」
バシと別のお婆さんがヤンキーを叩く。
「俊一、ババ様に何て事を」
・・・ババ様?
「おおお、これまた珍しい。鈴音、あの人たち知ってるか?きっとノロっていう人たちだ。神様の使いの人たちだよ。俺も初めて見た。」
さらにはしゃぐ父、拓郎。
白い装束。腰には葉。
神使いのノロ。
そしてババ様。
「・・・富山 静留 82歳」
ぼそっと私は呟いた。
闘牛鬼丸に向かい合ってたオババがキュッと振り返る。
イタタタタ。
鋭い視線が私に突き刺さった。
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