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振り返った私は知らない。
ちょうど、杏、と呼んだ音に反応して
整いすぎた顔を
その視線を
私の方へ向け
先輩が、暫くこっちを見ていた事を。
この瞬間から
また、私の心臓は面白おかしいほど
舞い上がったり
沈んだりを繰り返していく。
先輩を見かける度に
弾む心と
先輩の彼女を見る度に
落ち込む心と
そして
チラリと目が合うと
先輩からは絶対に視線を逸らさない。
いつも私の方が先に逸らす事になる。
私は一年前とほぼ変わらない。
だから、見間違えるはずがない。
先輩は私に気付いているのに
声すらかけてこない。
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