5656人が本棚に入れています
本棚に追加
「杏、どうした?」
部活帰りにシャチが私の袖を引っ張った。
「へ?」
「ココロココニアラズ」
片言で綴られたそのセリフに
首を傾げた。
「なんかやっちゃった?」
「は?何でそーなんの?」
「いや、杏の事だから何かドジったとか」
「違う、先輩にっ……あ」
ニヤリと口元を上げたシャチ
「先輩になに?」
「あ、えと、えっと、……」
シャチに背中を押してもらったものの
具体的な行動案が見つからず
保留になりっぱなしだったので
なんとなく、言い出すのが恥ずかしくて
「今日ね話しかけてみた」
「へー」
「あ、えっと、手話で」
目を真ん丸くしたシャチ。
「手話?」
「うん」
「できるの?」
「少し」
そりゃ、凄い!
コロコロと笑って
私の頭を撫でる。
「返事は?」
「見なかった
っていうか、先輩、ビックリしたんだと思うんだ」
「だろうね」
「だから、通りすがりに、こんにちは、って」
「へー」
ニヤニヤしながら私を見た何かを言いたげなシャチは
私の肩をポン、と叩いた。
最初のコメントを投稿しよう!