5656人が本棚に入れています
本棚に追加
一日一回
先輩に絡む視線ビームの時間を
どこかで必ず作る。
これを目標にする事にして
私は毎日先輩を探した。
チャンスがあれば
私の右手が文字を紡いだ。
一言の短いモノだったけど
拒否られるまでやろう、やりきろう、と心に誓いを立てた。
長かった連休が明けた今日は金曜日で
この連休中、学校へ登校してきた人数は、より少人数。
中庭を挟んで南に一年校舎があり、その真向かいの校舎は
二階に音楽室、三階は三年校舎。
休み時間
窓を覗いて、煌々とキラメク太陽の光に
掌を透かしてみる。
不思議な赤
まろやかな赤で縁取られた輪郭。
見入っていると
「ぴーっ」
牧場犬を呼び戻すような口笛の音。
正面の廊下の窓から
その音の主を発見。
それは見間違う筈なんて絶対にナイ。
御剣先輩、御本人様。
先輩が私に話しかけるなんて
そんな事、ナイだろうな、と思っていた。
右手と左手が
会話を紡いでいく。
ゆっくりと
しなやかに
麗しい先輩が
真っ直ぐに私を捉えて
セリフを投げ掛ける。
全身、鳥肌がたち
脚がカクカクと震えた。
手の動きは止まり
私はコクコクと首を縦に振る。
しつこいぐらいにそうして
脚と同じように震えた両手で答えた。
最初のコメントを投稿しよう!