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『先輩、今日は火曜日です』
私の右手と左手が
もう、戸惑う事なくセリフを紡ぐ。
『だな』
『どうしたんですか』
スゥ、と伸ばされた右手が
私の左手首に回されて
先輩の掌の大きさを改めて感じる。
ドキン、と脈が爆発したのを
ひょっとすると気付かれたかも、しれない。
秋の日暮れ前の少しだけ寂しそうな雰囲気が
先輩と私の画を引き立てている気がして
一層、走り出す心臓。
ちょうど手首の脈の上に
先輩の中指と人差し指が乗っかっていて
『あん』
「はい」
……恥ずかし過ぎて……死にそう……
『脈、早い』
先輩は
言葉を、手や指で表現する。
手話。
それが、音に出すよりも深く心に突き刺さるんだと知ったのは
去年、先輩に二度目の告白をした時だった。
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