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先輩の微笑みは私を失神させるくらいの勢いがあると 思う。 『いつになったら、慣れる?』 『一生、無理かも、です』 並んで歩くと 必ず私のペースに合わせてくれる先輩は 私の頭を撫でた。 『もう寒くなったら乗せられないから……』 そう紡がれた後 『今日で最後な?』 ヘルメットを渡される。 私の為に用意してくれた ピンク色のメットを被ると少しだけ周りの音が 薄れる。 私にはフルフェイス。 先輩はハーフ。 『ちょい、待ってて』 ズボンのポケットから小さな袋を取り出し ソコから摘まんだ小さなイヤホンを右耳に差し込んだ先輩の仕種は 見慣れていても どことなく、色っぽい。 不謹慎な事かもしれないけど 私はそんな姿を見て とても恥ずかしくなった。
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