35/35
5659人が本棚に入れています
本棚に追加
/155ページ
だって 経験不足で分からないんだもん。 みんなに教えてもらっても 先輩本人に教えて貰わなきゃ意味なかったんだ。 ‘コンコン’ 部屋のドアがノックされる。 ズルズルと鼻を啜って 慌てて「ハイ」と返したけど 応答がなくて ハッと気付いて ゆっくりドアを開けた。 ドン、と内側から弾けた心臓。 見上げて 勇敢に佇んだ先輩に 不意討ちを喰らう。 『イイ?』 『先輩、私、下に行きますよ?』 先輩は首を振って 『大丈夫、杏のお母さんにもお姉さんにも 部屋に行ってもイイって、お許し貰ったから』 セリフを紡いだ右腕がそのまま伸ばされて 私の頭をヨシヨシ、と撫でた。 『……そうですか、どうぞ…』 置きっぱなしの鞄と 部活バッグを机の上に乗せて 出来るだけ広くスペースを開ける。 先輩は大きいからか 私の部屋がとても小さく見えた。 ……実際、小さいんだけども。 『お邪魔します』 丁寧に頭を下げて 先輩が一歩ずつ、部屋の中へ入ってきた。
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!