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「あ、右は聞こえるんだけどまぁ、それでも
みんなの半分くらいかな?」
「……そう、なんですか……?」
うん、と頷いて
大きな掌から伸びた長い指で耳の中の黒いイヤホンを指差した。
「ま、生活するには不自由なかったんだけど
こないだみたいな場面ではちょっと……
聞こえてたらキミが腕を腫らす事もびしょ濡れになる事もなかった
ごめんな」
私の胸は異常なのかな
それに、不謹慎なのかな
こんなに真剣な話をされているのに
キュンキュンと苦しいくらいに
心拍がその速度をあげる。
しかも
先輩にとっては人生において、とても
重要な事なのに
自分が‘聞こえない’と、人に告白するのって
どれくらいの勇気がいる事なんだろう。
私はただ、ポカンと先輩の話を聞いていて
ハッと気付いた時には
もう、遅かった。
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