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先輩といると 心臓のスペアがいる。 こんなに速く動いていいのかなぁ、と 何度も何度も思う。 先輩の声が 低くて 心地よく撓るのが、一番のドキドキの元だ。 「ません」 「そう」 「はい」 「他の男に着いていくなよ?」 スゥ、と瞼が持ち上げられて 視線が合わさる。 この時 恥ずかしい、と思うより もっと、別の感情が溢れてきた。 「着いてなんか行きません」 私の部屋に 普段はない光景が広がる。 いるはずのない先輩。 握られる事のない手。 フワリ、と笑った先輩 「杏」 胸が、鼓動が キュン、と戦慄(ワナナ)いた。
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