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今までこんなに長く 男の人と見つめ合った事はナイ。 お父さんやお兄ちゃんとだって、ナイ。 スッゴク恥ずかしいし、逃げ出したいと思う筈なのに 逸りまくる心臓や 焦りまくる気持ちとは裏腹に やけに落ち着いた自分がいた。 見上げた先にいるのは 気持ちを抑えるのもままならないくらい 私を占領してしまった人。 「先輩、好き」 前髪を掬われて 髪を鋤くように頭皮に滑ってゆく 先輩の長い指。 私の目から片時も離れない先輩の瞳の色は 真っ黒だと知ったのは、今。 右目の際に ほんとに小さな小さな黒子があると知ったのも、今。 ふ、とカーブに沿った唇が おでこに触れる。 離れていくまでほんの数秒 また、引き寄せられて 大きな大きな先輩が 私を包むのに小さく小さくなった。 「杏、オレも大好き」 甘い響きに 我を忘れるくらい熱をあげられて 先輩の腕の中で祈りを捧げる。 ずっと、続きますように、と。
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