5658人が本棚に入れています
本棚に追加
/155ページ
今までこんなに長く
男の人と見つめ合った事はナイ。
お父さんやお兄ちゃんとだって、ナイ。
スッゴク恥ずかしいし、逃げ出したいと思う筈なのに
逸りまくる心臓や
焦りまくる気持ちとは裏腹に
やけに落ち着いた自分がいた。
見上げた先にいるのは
気持ちを抑えるのもままならないくらい
私を占領してしまった人。
「先輩、好き」
前髪を掬われて
髪を鋤くように頭皮に滑ってゆく
先輩の長い指。
私の目から片時も離れない先輩の瞳の色は
真っ黒だと知ったのは、今。
右目の際に
ほんとに小さな小さな黒子があると知ったのも、今。
ふ、とカーブに沿った唇が
おでこに触れる。
離れていくまでほんの数秒
また、引き寄せられて
大きな大きな先輩が
私を包むのに小さく小さくなった。
「杏、オレも大好き」
甘い響きに
我を忘れるくらい熱をあげられて
先輩の腕の中で祈りを捧げる。
ずっと、続きますように、と。
最初のコメントを投稿しよう!