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「杏、塾続けてよかったじゃん」 入学式の前日、制服のお披露目と どうやって着こなしたら可愛く見えるかの研究に 私の部屋に来たシャチがスカートのウエストを捲り上げながら言った。 「あ、やっぱりもうちょっと短くすればよかったかなぁ」 鏡にスカート丈を映して クルリと一周する。 「ブレザーじゃないのがちょっとショックだけど…… まぁ、この紺のラインが、可愛いよね」 めでたくシャチと同じ都立高へ進学が決まった私は 目の前のセーラー服を広げて身体に当てた。 「杏、小さいから、可愛い。 似合うよね。お兄さん、見たら大喜びじゃない?」 「えー」 「きゃー、杏かわゆい!」 「えぇー?」 制服を着ただけなのに シャチは私をグリグリと撫でた。 「……ねぇ、杏」 「ん?」 「御剣先輩はどこの学校にいったんだろうね?」 「んー、分からん」 「また、待ち伏せして制服見る事もできたじゃん」 「ん、確かに」 「先輩の、耳の事?」 「え?」 「遠慮?しちゃった? あー、ハンデを意識したんだ」
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