5658人が本棚に入れています
本棚に追加
/155ページ
「確かに難しいよね
気にしないでくれ、って言われても気になるよ。
だってあたしらは聞こえるんだもん
何不自由なく、聞こえる」
私は悔しくて唇を噛んだ。
「だけど、杏、それでも好きだったんでしょ?
遠慮するのは拒否られてからにすれば?」
「うっ」
シャチは意地悪をしたんじゃない。
私を元気づけてくれたんだ。
私がいつまでもダラダラとしてるから
シャチは背中を押してくれたんだ。
「しゃちぃぃぃぃぃ」
先輩に会いたいのも我慢して
先輩にしたら
耳の事なんて私にどうこう思われたくナイはずだ。
勝手に気にしていたのは
紛れもなく私。
シャチの言ったそのまま
先輩に遠慮した。
ヨシヨシと頭を撫でてくれるシャチは
「好きならもっかい会いにいきな」
「うん」
「しっかりしな、杏!」
「……うん」
最初のコメントを投稿しよう!