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早速二人で部屋へと向かう。コンクリート造りのアパートから年期を感じる。特に途中の階段の痛み具合がそれを物語っていた。きっとたくさんの思い出がこのアパートにはあるのだろう。
二階に上がるとまた違う景色が拝める。といっても二メートル程度の高さだが、廊下には他の住民の植木やスケートボードなどと、生活感の溢れる物が並んでいた。他にも女の子だって体育座りをしてうずくまっている。ん?
「ん? なんで?」
可笑しい。置物と勘違いしたが可笑しい者がある。いや、居る。
「おい蓮、あれはなんだ」
もしかしたら俺の見間違え、果ては妄想かもしれない。
「多分あれは体育座りしてる女の子だな」
そんなことなかった。
「あれだろ、ここの住民で自分の部屋の鍵をどっかに無くして、ああして困ってるんじゃねぇの」
「あそこ七号室の前ですよ蓮さん」
「ん~~~?」
二人して首を傾げる。しかし話しかけないことには何も進まない。放って部屋に入るわけにもいかないので、俺は声を掛けた。
「お、おい。どしたんだ?」
しかし反応はない。生唾を飲み込み、今度は近くまで歩み寄って肩を軽く揺らしてみた。そして気付く。この女の子、寝ている。
「え、寝てんの? えーっと、おはようございます?」
今度は微かにと反応した。起きたのだろうか、ゆっくり顔をあげようとする。と思いきや勢いよく顔を上げ、二人で驚いた。
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