第二話 普通科精霊高等学校

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 今日は入学式。入学者の誰もが期待に胸を膨らまし、新たな生活を歩み始める。こういう日は二人で初の登校を共にしたいものだが、今日は残念ながら俺一人で登校だ。蓮之介は訳あって自宅からではなく、同じ学園内に住む姉の寮から出発している。  賢明な方ならもう気付いただろう。そう、俺を起こす人間が存在しないのだ。指定の登校時間は八時十分、入学式開始は九時。そして現在時刻。 「ーーーー九時だ……」  つまりそういうことだ。  朦朧とした寝起き状態で目覚まし時計を確認する。一応六時から十分刻みで目覚ましをセットしていた。つまり俺は十八回目のアラームでやっと目覚めたわけだ。これでも俺にしては珍しい。 「あーくそ。起きるのだんるい……。あ゛あ゛あぁぁぁああぁつ、はッッ!!」  気合で壁まで四つん這いで行進する。そして俺は踵で風を切りながら、逆上がりをした。頭に血が溜まっていく。これが俺の最終手段。流石の俺も目覚めることができるって訳だ。 「………………よし」  立ちくらみと似た感覚に陥りながらも、洗面所にて支度を済ます。  着替えようと制服を取り出すが、思い出した。ズボンは良いが、指定の学ランが蓮之介の気の利いたアレンジで、短ランになっていたことを思い出した。  ざけんな。  なんで俺まで不良使用の制服を着なきゃいけないんだ。無論断った。だが替えの制服がない。
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