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*一時間後
心地よい揺れの中、誰かが自分の名前を呼んでいる。まるで遠いところから呼ばれているようだ。多分、目的地に着いたから蓮之介が俺を起こしてくれているのだろう。ところが極度に目覚めが悪い俺はまったく起きることができない。常人なら諦めるレベルだろう。しかし、蓮之介は優しい。こんな俺をしっかりと起こしてくれる。
「オラァ!!」
「ブゲラ!」
このように愛の拳を顔面に浴びせて起こしてくれるのだ。大丈夫痛くない、慣れてる。
「着いたぞ勢刃」
「あっ、はい……」
寝起きの朦朧な意識と、殴られたことにより起きた軽い脳震盪と戦いながら、俺は蓮之介の肩を借りて電車を降り駅のホームから出る。
そこで景色を、一望。
こんな状態で活性化するはずのない俺の脳が、途端に覚醒する。
「……すっげぇなオイ」
蓮之介にまったく同感だ。パンフレットやら何やらで下調べはしていた。受験のときにだって一度は訪れた。しかし、いわゆる田舎育ちの俺たちには、この人間の多さに開いた口が塞がらない。
交差点を埋め尽くす同年代ぐらいの人、人、人。空を埋めるように群立するビル。そして、誰かの精霊の力で発動させているのであろう、水や地の精霊が工事現場を飛び交って作業をしている光景には二人とも興奮した。
「コイツァすげぇ……ん?」
視界に入るもの全てを舐めるように凝視してた中、異様な雰囲気を纏わした三人組に目が留まった。
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