第2章

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「歌い手」の一人、アツシは北欧に来ていた。 以前彼がここに来た時この地は暗い闇で覆われ、生き物はおろか植物すらない不毛の荒野だった。人々はこの地を見捨て去って行った。 だがアツシはその地に光を取り戻した。 しかし、荒野と化した大地は荒れに荒れ蘇ることなど不可能だと思われた。 アツシは自分の持つ水晶の光と、自身の歌声でその大地に緑を蘇らせたのだ。 「放浪者」の中で「歌い手」は治癒の能力を持つ。 しかし、その歌声によって枯れた大地に命を芽吹かせる程の大きな力を使ったのだ。アツシは自身の命を削り、彼は一年もの間歌うことができなくなっていた。 その間彼を支えたのは、新たな「歌い手」の後継者タカヒロ。 彼の治癒の歌声で、アツシは少しならば声を出すことができるようになった。 かすれた声を出すたびにタカヒロから小言を言われてはいたが…
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