第1章

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男が一人、空の玉座の前に立っていた。男の名はナオキ。 ナオキは毎日、朝日の昇る頃にはここへやってくる。それがナオキの使命。彼はこの塔を護る守護者だからだ。 彼は今日も主不在の玉座を見て深い溜息を洩らした。 この玉座に座るべき王が姿を消してすでに三か月。 その日以来、朝日は姿を見せなくなってしまった。まるで王の不在を悲しんでいるかのように、連日雨が続く。 日中は晴れ間が広がっても、朝には必ず雨が降る。この塔から望む美しい朝日を見ることはできなくなった。 「放浪者の搭」 ここはそう呼ばれていた。 かつて光が奪われようとした時、世界を救った14人の王。その志を受け継ぐ者たちが集う場所。 彼らは「放浪者」と呼ばれていた。 彼らは世界各地を旅し、闇に包まれる地に光をもたらすのが使命。 そして何よりも、人々の心に希望と言う名の光をもたらすことが彼らの願いだった。
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