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『アツシ―』
『アツシ様―』
テツヤとナオトは涙声でアツシの名前を呼び、他の者たちは嬉しそうな顔でアツシの周りを囲む。
それを遠巻きに見ていたタカヒロにナオキが近づいた。
『行かれないのですか?』
『俺はずっとアツシ様のそばにいたから。みんなはアツシ様の事を気にかけてはいたけど、アツシ様が気にされるかもと顔を出しに来なかったし』
そう言ってみんなに囲まれているアツシをじっと見つめるタカヒロ。
『俺は王とアツシ様のおかげで、大切なことを思い出すことができた気がする』
『それはアツシ様も同じです。アツシ様はタカヒロ様に感謝しておいででした』
ナオキが言うとタカヒロはナオキをじっと見つめた。ナオキが小さく頷くと、アツシがタカヒロに近づいてきてその体を抱き締める。
『タカヒロ、また歌えることができたのはお前のおかげだ』
『アツシ様…』
タカヒロの頬を一筋の涙が流れていく。アツシはタカヒロを抱き締めていたその手を緩めると頬の涙を拭ってやった。
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