第6章

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ナオキが言うと後継者たちの表情が引き締まった。 ナオキもそうだった。「放浪者」は皆の憧れ。そしてそれを率いる王は神にも等しい存在。 その王と「放浪者」の者たちに会うのだ。彼らの心境は自分が一番よく分かっている。だからこそナオキは大きな声で彼らに言った。 『私たちはあの場で君たちを待っている』 と。 ナオキはそう言って彼らに背を向けると階段を上がって行く。後継者たちはその後姿をじっと見つめていた。そして、ぴりぴりとした空気を肌で感じていた。 ナオキは階段を上りきると振り返り後継者たちに目を向け頷いた。それを見た後継者たちは一歩一歩階段に近づいて行く。 先を歩いていた男が一瞬足を止め、後ろに続く者たちも足を止める。彼は振り返り四人の顔を見つめると、四人が黙って頷いた。 皆同じ気持ちだった。後継者として選ばれたことを嬉しく思いながらも、「放浪者」という偉大な者たちの名前を背負うことに足が竦んでいるのだ。 だがそれでは前には進めない。彼は自分を見つめる四人の視線を感じて大きく頷いた。 『行こう』 そう言って歩き出した。 五人はゆっくりと一歩を進めていく。 それを階段の上から見守っていたナオキは優しい微笑みを浮かべ彼らに背を向けた。
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