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『タカヒロ様がまともなこと言ってる…』
ぼそりと呟いたショーキチの声が、タカヒロには聞こえていたらしい。すたすたと歩み寄ってくるタカヒロの勢いにショーキチは逃げる暇さえなかった。
『あ?なんか言ったか、目力野郎!』
『す、すみませんタカヒロ様!』
耳を引っ張られ悲鳴を上げるショーキチをナオキは苦笑いを浮かべて見つめていた。
『まあ、こんな感じだよ。俺たちにとって、この「放浪者の塔」は家みたいなものだから、ここに戻ればみんな家族との時間を楽しむ。そう思っていればいい』
アツシの言葉に後継者たちは納得したように笑顔を浮かべた。
憧れてやまなかった「放浪者」が自分たちを家族と呼んでくれる。それは何物にもかえられぬ程嬉しい言葉だった。
『それじゃ…』
アツシの声色が変わり、騒いでいたタカヒロとショーキチもアツシに視線を向ける。
『あの方が我らの王だ』
アツシが手を伸ばすと「放浪者」たちは玉座が見えるように脇へ退いた。後継者たちの前には玉座に座る一人の男。
その姿に彼らは今一度頭を垂れた。
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