第6章

12/20

15人が本棚に入れています
本棚に追加
/90ページ
『君の部屋はここだ。一人だと不安かな?』 『いえ…』 ナオキの言葉に俯いた男は顔を上げるとまた何かを訴えるような視線をナオキに向ける。 『タカノリだったな。なにかあれば声を掛けてくれ』 ナオキはそう言ってタカノリに背を向けようとした。 『あの…』 ナオキが呼び止めるその声に振り返るとタカノリは俯いていた。 『いや、なんでもありません』 タカノリはそう言うと深く頭を下げて部屋へと入って行った。 タカノリの様子が気になりはしたが、ナオキはその場を去った。後継者としてここに来たばかりの彼が落ち着かないのも無理はない。少し時間が必要だと思った。 ナオキが自分の部屋に向おうと塔の階段を上がっているとナオトが座っていた。 『今日の役目は終わりか?』 ナオトに問いかけられナオキは微笑みでそれに答えた。ナオキはナオトと一緒に階段を上がって行く。 ふとナオトが足を止め振り返った。その視線は遠いどこかへと向けられている。ナオキも同じように地平線の彼方へと目を向けた。
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加