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『やっぱり、最初はお前と帰りたかったんだよ』
『私のためにすみません』
『だからお前のためじゃねーって!俺がそうしたかっただけなんだから!』
ナオトはそう言いながら階段を上がって行く。その背中を見つめてナオキはその頬を緩めていた。
小さな頃からこの背中についてきていた。背丈はいつの頃かナオトを追い越していたが、自分が追い続けたのは間違いなくこの背中なのだ。
『ありがとうございます、ナオト様…』
小さく呟くとナオトが振り返った。
『なんか言ったか?』
『いえ、何も』
ナオトは優しくナオキに笑いかけた。二人は階段を上がり回廊から地平線に目を向けた。
『私は幸せ者ですね』
ふとナオキが呟いた。
『私は五年もの間、王の側にお仕えすることができました。その間、ナオト様にずっと待っていただけていたなんて。アキラ様にも任を解かれたら一緒に旅をしようと声を掛けていただきましたし…』
『それだよ!』
いきなりナオトが声を荒げ、ナオキは驚いて目を見開いていた。
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