15人が本棚に入れています
本棚に追加
/90ページ
『前はナオ兄たちを区別するためにそう呼んでたけど、今はナオト兄俺よりちっちゃいじゃん』
笑いながらタカノリが言った言葉にナオキが吹き出した。
『あ？』
『いえ、なんでも…』
睨まれて笑いを抑えようとするが、ナオキは肩を震わせていた。
『おまっ、相変わらず可愛くないな！』
ナオトは言いながらタカノリの首に手を回す。そんなナオトにタカノリは抱きついて
『…ナオト兄、やっと会えた…』
またその頬を涙で濡らした。
『だから、泣くなって！』
茶化すように言ったナオトの声が少しだけ鼻声になっていることに気付いたナオキは、ふっと笑った。抱きついたまま泣いているタカノリをナオトは優しく抱き締めると
『ほら、いい加減泣き止めよ』
そう言って顔を覗き込んだ。タカノリは涙を拭ってナオトから離れると二人に向き合う。
『俺、ナオ兄たちのおかげで「放浪者」の一員になれたんだって思ってる。だから…』
言葉を止めたタカノリはもう一度しっかりと涙を拭くと、二人に強い瞳を向けた。
『お二人に感謝しています』
そう言ったタカノリの顔は、一人の「放浪者」の顔だった。
最初のコメントを投稿しよう！