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テツヤも俯いたまま顔を上げることができずにいた。
『テツヤ、お前が他の命を奪わないのは優しさではなく弱さだ。命とは奪うだけではないのだ。お前がその命を食うことでお前の中に生きていく。お前を強くする』
テツヤは顔を上げシャーマンの瞳を見た。じっと見つめる自分に応えるように頷いた彼女の瞳は不思議と優しく感じられた。
『ケンチ、ネスミス。私はお前たちに足りないものを教えることはできぬ。お前たちは自分でそれに気づかねばならない』
言われた二人は顔を見合わせる。だがそれも試練なのだと感じ取った二人は黙って頷いた。
シャーマンはもう一度皆の顔を見回した。
『あと一つ、お前たちには守ってもらわねばならぬことがある』
『なんだよ』
ケイジがめんどくさそうな声を上げると、シャーマンはくすりと笑って見せた。
『むやみに獣の姿になってはならない。お前たちはあくまでその姿で試練を行うのだ』
『誰があんな姿になるかよ』
ケイジのぼやくような呟きにシャーマンは楽しそうな声を上げた。
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