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『テツヤ』
ケンチがテツヤの肩をぽんと叩く。テツヤは自分の目を見つめるケンチに頷いて見せると一緒に歩き出した。
一時間ほど歩くと森を抜けた。その先には草原が広がっている。しかしこの草原はもうアルカディアの外。ここは彼らの統治下ではない。つまりこの先では彼らは守られる立場ではなく、気を抜けば狩られる立場となりかねない。
この草原の先に灼熱の砂漠がある。そこは言い伝えでしか聞いたことのない場所。少しずつ彼らの緊張は高まっていた。
『ここにいても仕方ねーからな。行くか』
ケイジが先を歩き出すと、皆がそれについていく。
『しかし、意外だな』
ケンチがケイジに向かって声を掛けた。ケイジが面倒臭そうに顔を向けるとケンチはケイジの隣に並ぶ。
『お前、面倒なことは嫌いなのに…』
『…』
ケンチが微笑みかけるとケイジは目を逸らした。ケイジは額に手を当てると視線を泳がせる。
『正直、昨日シャーマンに睨まれてビビったんだよ。俺もこんなんじゃダメなんだろうなって思ったから…』
言いながら歩く速度を速めていくケイジ。その顔は照れているようにも感じられた。
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