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群れは二人の前で足を止める。そしてその姿は次々と美しい娘へと変わっていく。
『ケンチ、テツヤ。うちのショーキチを見なかった?』
『あの子ったら、どこへ行ったのかしら?』
『あの子のためにご馳走を用意したって言うのに…』
よく見れば娘たちの口元は血で濡れている。その様子に苦笑いを浮かべた二人は引きつったような笑いを浮かべた。
『さあ…』
『どこでしょうね?』
二人の様子に気づいたのか娘たちはくすりと笑う。
『そんなに怯えなくても…』
『ショーキチの大切な友人のあなたたちを食べたりしないわ…』
『そうそう…』
彼女たちは二人をからかうように腕を絡めるが二人は揃ってその手を振りほどく。
『ふふ…』
『ショーキチを見かけたら帰ってくるように言ってちょうだい』
『お願いね』
そう言うと彼女たちはまたライオンの姿に身を変え足早に去って行った。
群れが去ったのを見てテツヤは大きく息を吐いた。
『相変わらずだな、ショーキチのお姉様方は…』
『ショーキチが逃げ回るのも分かるわ…』
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