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『立派に長の役割を果たしているな、ケンチは…』
テツヤが言うとケンチは視線を落とした。
『俺などまだまだ父上の足元にも及ばぬ』
『だが試練を終えれば俺たちが次の長となり、このアルカディアを治めていかねばならない。父君の影に隠れてはいられないぞ』
『試練か。明日の夜だったな、魔女の元に行くのは…』
ケンチの呟きにテツヤは黙って頷く。テツヤもまた不安げな表情を浮かべた。
次の長となるべき若者たちに課せられる試練。それは命を落とすかもしれないほどに過酷なものと聞いている。
『今考えてもしょうがねーよ。森へ行こう!』
テツヤは沸き上がる不安を隠すようにわざと明るい声を出した。その声にケンチも笑顔を取り戻す。
二人はまた歩き出した。
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