謁見

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「族長、私は見世物ではございませぬ」 「それは分かっておるよ。シェリーはほんに翼を褒められるのが好きではないのお」 「褒められるのは嬉しい物でございます。しかし私は翼の色だけを見られるのが好きではないだけでございます」 「ワシはお主の実力も評価しているつもりじゃよ。騎士団に入隊して十二年、隊長になって六年。お主はよくやってくれている。今日呼び出したのも一応は仕事だしの」  仕事を「一応」と言ってしまう辺りが族長らしいと思う。  族長はなにかと理由をつけて私を呼び出し、こうして話し相手をさせる。  以前、重要な仕事の最中に呼び出しを受け、それを仕事を理由に延期を申し出てからは、こうして仕事を口実に呼ぶようにはなったが。 「族長、仕事を一応などと言わないで下さい」 「これこれ、シェリー。そういうのは言いっこなしじゃ。それでハルヴァントは息災か?」  族長は口が滑ったとでも言わんばかりに話題を変えてくる。 「父上は今でも頻繁にフォブレリー族長国に出入りしています。向こうにも友人は多いようで忙しなく行ったり来たりしているようです」 「そうか、そうか。それは良い事じゃな」  族長はうんうんと頷く。  父ハルヴァントは元来わが家が行っていた職人業を仕事としてちょうど国が大きく発展する所であった隣国のフォブレリー族長国に頻繁に出入りしていた。  現地で、フロイテ族長国の建築法を教えたり、実際に物を作ったりしていたと聞く。 「ハルヴァントのようにフォブレリー族長国や、その他の国に頻繁に出入りする者がいるのは国が安定している証拠だ。ワシもお陰で随分助けられた」 「父上は自由奔放ですので、そのような認識はまったくないと思いますが」 「それがいいんじゃよ。またワシの所にも訪ねてくるように伝えておいてくれ」 「はい。確かに伝えておきます」  族長は大きく頷くと今までの朗らかな表情から一変して真剣な顔つきに変わる。  ここからがいよいよ本題だ。
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