謁見

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「これはツヴァシェリーヌ隊長」  部屋を出て、外に出る為に廊下を進むとと私と同じく飛翔騎士団で隊長を務めるキューンハイト隊長が部下を引き連れて歩いてきた。 「団議以外で会うのは久し振りだな。族長に呼ばれたのか?」  キューンハイト隊長は面白くなさそうに問う。  一回り以上も歳の違う私が同じ隊長格である事をよく思っていないらしく、ことあるごとに嫌味のような事を言ってくる。 「はい。ナーベルト様への書状をお預かりしました」  私の説明にキューンハイト隊長の眉間に寄っていた皺がなくなる。 「そうか。私は次の三国会談で族長の護衛の任に付く為に呼ばれたのだ。しばらくここにいることになるだろう」  前回の三国会談の後、族長の護衛として一緒にフォブレリー族長国を訪れた騎士団長が使者としてグアラナスティンに行っている為、今回はキューンハイト隊長がその任に付く事になった事は既に聞いている。  私を良く思っていないキューンハイト隊長がわざわざ自分から話しかけてきたのはその任の事を自慢し、自らが上であると誇示したいからであろう。 「そうですか。私はこれより、エルツァイフスに戻ります。失礼いたします」  私は深々と一礼して、キューンハイト隊長の横を通り抜ける。 「小娘が。これで立場を弁えるであろう」  ちょうど身体がすれ違う所で、キューンハイト隊長が呟く。  私は聞こえなかったフリをしてその場を後にした。
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