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ジトジトジトジト……
降り止まない五月雨ならぬ七月雨。
シトシト降るならまだしも、ジトジトと雲から絶え間なく落ちてくる水滴は多大な湿気を伴って気分を憂鬱にさせる。
髪がまとまんねぇーっつうの…
窓側の一番後ろ。机に突っ伏し、濡れて妙に鮮やかな往来をガラス越しに視線だけで眺めた。
それほど気温は高くないけれど、湿度のせいでジトッとした空気が顔から首の辺りにまとわりついてひたすらにウザったい。
肺の中の空気をこれでもかと吐き出して重ねた腕に顎を乗せ直す。
晴れたら晴れたで、暑いけどさ。
呟くことはせず、ただ視線で訴える。自分の位置からは教室の対角線上に居る、廊下側一番前のアノ子の背中に向けて。
…………こっち気付けよ。
そんな無謀な試みを始めて早40分。授業時間の残りはあと10分。
お経の類に聞こえる古典の時間は退屈極まりないから、教室中の生徒も約半分は机に突っ伏して寝てるのに、アノ子は姿勢も正しく真面目に黒板とノートの間で視線を往復させてる。
…………頭撫でたい。
顔を上げる度揺れる真っ直ぐな黒い髪が、蛍光灯の光にさえもサラサラとキレイ。
退屈な午後。かといって微睡みは遠くて、それからアノ子も遠くにいて。
授業はあと8分。
終わったら真っ先に近寄って、手を取って。
教室から連れ出してやる。
―fin―
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