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顔もスタイルも頭も何もかも。
全て平凡な俺からすれば、須藤さんはとんでもない魔物にしか見えない。
イケメンの中のイケメン。
王様のような貫禄を持つ須藤さんは、きっとあの件がなかったら、
それこそ俺の中で憧れの人ナンバーワンだっただろう。
後輩の面倒見だって良いらしいし、悪い噂なんてひとつも聞いたことがないから、
中身が外見に伴っているのかもしれない。
でも。
実際俺の中では、ただの最低人間だった。
「おかえり、早川ちゃん」
フロアに戻って来た俺に児玉が声をかけて来る。
こいつも中々のやり手で、すでに去年展示会を開いている。
いつもヘラヘラしていてチャラく見えるけれど、中身は結構しっかりしていてシビアだ。
「今からまだ仕事すんの?」
「おう、あと少しな。お前は?」
「俺はこれ切り上げたら帰るわ。待っててやろうか?何か食べに行く?」
「いいね~~、じゃあ急いで書類まとめるよ」
そう話す視界の隅っこに、須藤さんの姿が映る。
俺のシマと須藤さんのシマは、ほぼ端っこ同士だ。
おかげで面と向かって会うことなんて、ほとんどないし、声が聞こえることもない。
たまに視界に入るけれど、それは仕方ないので目を瞑っておこう。
「早川ちゃん、俺ラーメン食べたい」
「分かった分かった。てか仕事しろ」
冷たく言い放ってやると、拗ねるように口を尖らせるものだから、
「ブサメン」とけなして笑ってやったら資料で頭を叩かれた。
ちょっとした茶目っ気じゃんか。
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