第1章

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顔もスタイルも頭も何もかも。 全て平凡な俺からすれば、須藤さんはとんでもない魔物にしか見えない。 イケメンの中のイケメン。 王様のような貫禄を持つ須藤さんは、きっとあの件がなかったら、 それこそ俺の中で憧れの人ナンバーワンだっただろう。 後輩の面倒見だって良いらしいし、悪い噂なんてひとつも聞いたことがないから、 中身が外見に伴っているのかもしれない。 でも。 実際俺の中では、ただの最低人間だった。 「おかえり、早川ちゃん」 フロアに戻って来た俺に児玉が声をかけて来る。 こいつも中々のやり手で、すでに去年展示会を開いている。 いつもヘラヘラしていてチャラく見えるけれど、中身は結構しっかりしていてシビアだ。 「今からまだ仕事すんの?」 「おう、あと少しな。お前は?」 「俺はこれ切り上げたら帰るわ。待っててやろうか?何か食べに行く?」 「いいね~~、じゃあ急いで書類まとめるよ」 そう話す視界の隅っこに、須藤さんの姿が映る。 俺のシマと須藤さんのシマは、ほぼ端っこ同士だ。 おかげで面と向かって会うことなんて、ほとんどないし、声が聞こえることもない。 たまに視界に入るけれど、それは仕方ないので目を瞑っておこう。 「早川ちゃん、俺ラーメン食べたい」 「分かった分かった。てか仕事しろ」 冷たく言い放ってやると、拗ねるように口を尖らせるものだから、 「ブサメン」とけなして笑ってやったら資料で頭を叩かれた。 ちょっとした茶目っ気じゃんか。
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