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休み明けに出た会社で、予想だにしていなかった話を聞かされる事になる。
部長に個室へ呼び出され、入った部屋の中にはすでに須藤さんがいた。
内心心臓が軽く跳ねたが、素知らぬ顔で須藤さんに頭を下げる。
この人と一緒に呼び出されるなんて。
嫌な予感が頭をよぎりつつ、須藤さんの横に立って部長の方に体を向ける。
「実はな、早川。お前に仕事を頼みたい」
「仕事……ですか?」
こうやって部長から直々にお声がかかるのは珍しい。
面倒臭い仕事でも、押し付けられるんじゃないだろうか。
部長はその顔に自然な笑顔を浮かべると、俺の目を見て言った。
「美島さんの件も落ち着いた事だし……そろそろ次の人材を探しに出る頃だろう?」
その話か、と思い少しだけ肩の力が抜けた。
確かに美島さんついては展覧会を大成功におさめたという事で、一旦区切りが出来た。
いくら美島さん一筋な俺でも、いつまでも一人しか担当の職人がいないようじゃこの会社ではやって行けない。
そろそろ新しい人材を、という部長の言葉は当たっている。
「はい。俺も考えていました。今日明日にでも情報を集めながら回ってみます」
「あぁ、それなんだがな……」
部長の視線がチラリと須藤さんの方へ向けられる。
その微妙な動作が、何となく嫌な雰囲気を作り出す。
それでも何も言わずに言葉の先を待っていると、部長は再び俺を見つめて今度は満面の笑みを浮かべた。
「いま須藤が口説いている職人を、お前にも手伝ってもらいたいんだ」
「…………」
嫌です。
思わず喉まで出かかった言葉を必死で飲み込む。
はあ?
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