第4章

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須藤さんが口説いている職人を、俺にも手伝えって? 心の中で同じ言葉を繰り返し、もう一度意味をちゃんと理解しようと試みる。 そして理解した上で、俺は真っ直ぐに部長を見返した。 「お言葉ですが、須藤さんほどの方をお手伝い出来るような力、俺にはありません」 というか、むしろ誰にも無理だろ。 成績トップの須藤さんだぞ? 人の手なんて借りずとも、どうせその内その職人も須藤さんに落ちるさ。 俺の言葉に部長は苦笑いをこぼしながら、また須藤さんへ視線を送った。 「えらく厳しい状況なんだよな、須藤?」 「はい。声をかけ始めて三ヶ月は経ちますが、一向になびいてくれる気配がありません」 出来る男の声でハキハキと喋る須藤さんは、 そういえばまだこの部屋に来て一度も俺を見ていない事に気付く。 だからって何だって話だけれど、癪に障るのは確かだった。 「早川、須藤がここまで手こずるなんてな、本当に珍しい。お前は須藤と真逆のタイプだし、 もしかしたら上手く行くかもしれないだろ?」 真逆だというのは分かる。 けれど、それが結果に繋がるかと言えば、やっぱりやってみなくちゃ分からない。 …………。 結局、やるしか道は残されていないんだよな、きっと。 須藤さんにも部長にも伝わるように、わざと小さく溜息をこぼしてやる。 だいたい、誰が好き好んで他の社員の営業を手伝う? 新人じゃあるまいし、みんな自分の仕事で手いっぱいだっていうのに、 たまたまキリが良かったってだけで声をかけられるのは、正直めちゃくちゃ迷惑な話だ。 そんな俺の気持ちを汲み取ったのか、部長はわざわざ笑顔を取り繕いながら俺の肩を強めに叩いた。 「そう嫌な顔をするな、早川!これが上手く行けば、担当はお前にするつもりだからよろしく頼むよ」 はぁ? 須藤さんのおこぼれを貰えっての? ふざけてんのか、このハゲジジイ。
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