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須藤さんの運転で着いた工房は、会社から二時間以上もかかる小高い山の頂上にあった。
辛うじて残っている狭い道跡を辿り、鬱蒼と茂っている森を抜けて頂上に出ると、急に開けた場所に出る。
そこには赤い屋根の大きなペンションのようなものが立っていて、
建物の煙突からはもくもくと煙が上がっていた。
適当に車を停めると、降りた須藤さんが相変わらずの笑みで俺を見る。
「道、覚えたか?」
「……あとでググりながら地図作ります」
「はは、賢明だ」
こんな距離、正直一度で道を覚えられるわけがない。
しかしまさか、こんなにも離れた山奥に住んでいるだなんて。
「権田さんはここに、お弟子さんと二人で住んでる」
権田太郎さん。
名前からして、いかにも無骨そうな感じがする。
車の中で聞いた情報じゃ、年は三十二歳とまだ若く、二十歳に家を出てからずっとここに住んでいるらしい。
自給自足の生活をしているみたいだが、ネットでの株の売買でそこそこお金を儲けてはいるようだ。
つまり、本当に好き好んでこんな場所に住みながらの自給自足。
須藤さんが口説き落とせないという事もあるし、かなり癖のある職人に違いない。
気を引き締めなおして、須藤さんの後へ続き歩いて行く。
そこにちょうど建物から一人の男性が姿を現し、俺達に気付いた途端パアッと笑顔を浮かべた。
「わぁ、いらっしゃい!今日はお二人なんですね」
そう言って嬉しそうに顔をほころばながら駆け寄って来るその人は、見た感じ年は二十代前半。
おそらく資料に載っていた、弟子の影山浩輔さんだろう。
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