第4章

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「こんにちは、影山さん。権田さんはおられますか?」 品の良い笑顔と声で話す須藤さんは、完全に仕事モードのようだ。 俺に向けていたあの意地の悪い顔はどこへやら。 マジでムカつく。 「先生ならちょうど工房にいますよ。どうぞ」 影山さんに続いて、建物の中に入って行く。 入ってすぐにリビングらしき部屋が広がり、ついついぐるりと全体を見渡してしまう。 一番に目についたのは、カウンターキッチンの前に置かれている大きなテーブル。 全体的にシャープなラインで一見ありがちな形だが、その色使いが独特だった。 映えるような赤色がバランス良く塗られ、意外にも木目とマッチしている。 全体的に見た時、どれだけの割合で色を施せばいいのか熟知しているような、 それでいて選ぶカラーが派手で、おそらくその部分は作った本人の感覚で上手くカバーしている。 浮き過ぎない、それでいてインパクトのある作品。 感想はひとつ。 センスがもの凄く良い。 「権田さんの作ったものだ」 あまりにもテーブルに見惚れていた俺に、須藤さんが隣で小さく呟く。 なるほど。 癖のある作品を作る職人は、ほぼ百パーセント癖がある。
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