第4章

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影山さんが入れてくれた珈琲を飲みながら、他愛のない世間話をいくつか交わす。 やっと見慣れて来た権田さんだが、事あるごとに須藤さんのイケメンぶりを褒め称え、 あからさまに口説こうとしていた。 この様子じゃ、色仕掛けでもしてやればコロリと行きそうなもんだ。 だけどそんなやり方を使うのは、営業技術のない社員だけだろう。 俺は、絶対にそんな邪道な手は使わない。 きっと、須藤さんも。 そんな風に思ってしまう自分に嫌悪感を抱いてしまうが、 須藤さんがきちんと仕事をこなす人だというのは知っている。 多分、色仕掛けなんて馬鹿な方法は使わない。 「ねぇねぇ、早川……健斗ちゃんだっけ?あなたこのお仕事は長いの?」 今まで須藤さんメインの会話が繰り広げられていただけに、 不意に自分へ話を振られ、一瞬反応が遅れそうになってしまう。 けれど何とか意識を叩き起こし、にこりと笑顔を浮かべて権田さんを見つめた。 「六年目になります」 「ふぅん。それなりに仕事は出来る……って感じね」 値踏みするように見て来るその目は、やっぱりちょっと化粧のせいか迫力がありすぎる。 それでも笑顔を崩さずにいると、急に権田さんが不敵な笑みを浮かべた。 「いいわぁ、健ちゃん……真っ直ぐそうな感じが何とも言えないわね。虐めたくなっちゃう」 正直、ゾッとした。 獲物を睨み付ける狩人のような目で見て来るものだから、その凄みと言ったら半端ない。 本当にとって食われそうな気がして、苦笑いを返すしか出来なかった。 「でしょう?俺のお気に入りなんですよ。早川はサドの本能をくすぐるんです」 小さく笑いながら言う須藤さんを、思わず横目で睨んでしまう。 今のは冗談じゃなく本心だろ。 このムッツリえろサド人間。 それって人としてどうよ? 性格腐ってるっつーの。
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