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会話もなく十分程経った時、不意に須藤さんが口を開いた。
「今日、飲みに行くか」
「は?」
予想外の言葉に、ついつい地が出てしまう。
ていうか、飲みにだって?
馬鹿じゃねーのか、この人。
「行きません」
スッパリと断ると、それを予測していたのか須藤さんが楽しそうに笑う。
「部長も来るって言ったら?」
嘘?
本当?
部長が来るなら、話は別だ。
新しく仕事を始めたという事もあるし、そういう大事なタイミングでの酒の席は大切にするようにしている。
気持ち良く仕事をやって行く為には、人間関係は良好でなければならない。
例外は、この人だけにして。
「……本当に部長も来るんですか?」
「ああ。というか、部長に誘われたからな。それよりどうせ帰ってもまたすぐに出なきゃならないし、
このまま俺の営業回りに付き合えよ早川。そのあと車だけ置きに一旦会社に戻る」
「…………はあ……」
全く気乗りはしなかったが、須藤さんの営業回りが気になったのは確かだ。
どんな風に職人と接しているのか。
すごく、気になる。
「まぁ、いいですよ。付き合います。…………絶対部長はお店に来るんですよね?」
「くどいぞ、早川。しつこい男はモテねーよ」
いや、くどくもなるだろ。
アンタと二人きりで飲むなんて、みすみす自爆するようなもんじゃねーか。
明らかに不安が残る中、俺は仕方なく飲み会へ行くことにした。
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