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携帯をポケットにしまい込み、須藤さんがいる個室に戻った。
靴を脱いで障子を開け、重い体をゆっくりと持ち上げる。
後ろ手に障子を閉める俺の姿を、テーブルに肘を付きながら須藤さんが見ていた。
「遅かったな。吐いたか?」
「いいえ。大丈夫です」
言いながら、少し倒れ込むように自分の席へ腰を下ろす。
うわ。
歩いたせいか、酒の回りが一気に来た。
ちょっと、フワフワする。
「はぁ」
小さく息を吐くと同時に須藤さんが腰を上げる。
「俺も行って来る」
そう言うと俺の返事を待たずに、軽やかな足取りで部屋を出て行った。
一人残された部屋で、ただただボーッと放心する。
部屋の外から聞こえて来る食器の音や店員が歩く音、席にひとつ付いているベルの鳴り響く音や、
いらっしゃいませ、ありがとうございましたの掛け声。
色んな音を聞きながら、気付けば満タンに入っていた目の前のビールが、いつの間にか空になっていた。
あれ?
俺が、飲んだっけ?
更に酔いが回って来て、頭の中がぼんやりと霞んでいる。
眠い。
寝ようかな。
誰も、いないし。
漠然とそんな風に考え寝転ぼうと手を付いたと同時に、障子がスーッと開く。
入って来た須藤さんは俺の姿を見るや否や、呆れ切った表情を浮かべた。
「こんな所で寝る気か、バカ」
大きく息を吐きながら、戸を閉めた須藤さんが俺の隣に座り込む。
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