第1章

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お互い何も喋らず、俺は階数が上がっていくパネルをただひたすら眺めていた。 空気が薄い。 早く着かねーかな。 溜息をこぼしたい気持ちをグッと堪え、ひたすら無心になろうとした。 天敵、と言うけれど、実際の所は俺が彼を嫌っているだけで、 向こうからしてみれば俺なんて、足元に転がっている石ころみたいなもんだろう。 エリートの須藤さんは俺の二年先輩だけど、 俺が入社した時にはすでにナンバーワンの成績を継続し続けていた。 彼が受け持つ職人は何人もいて、そのほとんどの職人が展示会を開催した過去がある。 まだ開催していない職人だって、これからきっと売れて行くだろう。 須藤さんの実力は、本物だ。 そして。 だからこそ。 彼が言った、あの言葉に。 心底腹が立って、仕方がなかった。 五年近く経った今も、あの時の怒りは忘れていない。
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